「やる気がないなら帰れ!」という言葉、職場でよく耳にする方もいるかもしれません。
特に昔ながらの体育会系の上司に多い言い回しですが、これを本当に受け取って帰ってしまった場合、給料はどうなるのでしょうか?
また、法的にはどのような解釈がされるのでしょうか?本記事では、職場で「帰れ」と言われた際の対応や給与への影響について詳しく解説します。
「帰れ!」は法的にどう解釈される?

仕事中に上司から「帰れ!」と言われた場合、これは法的にどのように解釈されるのでしょうか。
指揮命令と捉えられる可能性が高い
「帰れ!」という言葉は、一般的に上司からの指揮命令と解釈されます。
つまり、これは会社側からの業務命令であり、労働者がその命令に従って帰宅しても「無断欠勤」や「早退」とはみなされない可能性が高いのです。
会社との雇用契約において、労働者は会社の指揮命令に従う義務があります。その指揮命令が「帰れ」であれば、それに従うことは労働者の義務を果たしていることになるのです。
民法536条2項の「危険負担」
法的には、民法536条2項の「危険負担」という考え方が適用されます。この条文は以下のように規定しています:
「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付の履行を拒むことができない。」
労働契約において、会社(債権者)が労働者(債務者)の労務提供を「帰れ」という形で拒否した場合、これは会社側の責任で労働者が労務を提供できなくなったことになります。
この場合、会社は労働者に対して給料(反対給付)を支払う義務を免れません。
「帰れ!」と言われて帰った場合の給料はどうなる?

「帰れ」と言われて実際に帰宅した場合、その時間分の給料はどうなるのでしょうか。
基本的には給料カットされない
法的解釈では、上司から「帰れ」と命令されて帰宅した場合、その時間分の給料はカットされるべきではありません。
なぜなら、労働者は働く意思があるにもかかわらず、会社側の都合で労務の提供を拒否されたからです。
具体的には:
- 完全月給制の場合:基本的に給料への影響はない
- 時給制の場合:本来働くはずだった時間分の給料を請求できる
- 日給制の場合:その日の給料を全額請求できる
ただし、実際には会社の給与規定や就業規則によって異なる場合もあります。
帰った時間によって「早退」「欠勤」扱いになることも
会社によっては、上司の「帰れ」という言葉を正式な業務命令とは認めず、自主的な早退や欠勤として処理されることもあります。特に小規模な会社や個人経営の会社では、このようなケースが多いようです。
その場合、就業規則に基づいて以下のような扱いになることがあります:
- 早退扱い:その時間分の給料がカットされる
- 欠勤扱い:一日分の給料がカットされる
このような扱いに納得がいかない場合は、労働基準監督署に相談するという選択肢もあります。
「帰れ!」と言われたときの対処法

上司から「帰れ!」と言われた場合、どのように対応するのが良いでしょうか。
冷静に確認する
まず、上司の発言が本当に「帰宅命令」なのか、それとも単なる怒りの表現なのかを冷静に確認することが大切です。例えば、以下のような言葉で確認してみましょう:
このように確認することで、上司の真意が明らかになることがあります。
記録を残す
上司からの「帰れ」という指示に従って帰宅する場合は、できるだけ証拠を残しておくことが重要です。例えば:
- 日時と発言内容をメモする
- 他の同僚が聞いていたら、のちに証言してもらえるよう依頼する
- 可能であれば、メールや社内チャットで「ご指示に従い帰宅します」と記録を残す
これらの記録は、後日トラブルになった場合の証拠として役立ちます。
上司の上司や人事部に相談する
繰り返し「帰れ」と言われる場合や、不当な扱いを受けていると感じる場合は、上司の上司や人事部に相談することも検討しましょう。多くの場合、一人の管理職に給料カットなどの権限はありません。
「○○さんから『帰れ』と言われたのですが、この場合の勤務時間や給料はどうなるのでしょうか?」と尋ねることで、会社の正式な見解を確認できます。
「帰れ!」が常態化している職場の問題点

「帰れ!」という言葉が日常的に使われている職場には、以下のような問題がある可能性があります。
パワハラの可能性
「帰れ!」という言葉で労働者を威圧することは、パワーハラスメントにあたる可能性があります。特に、感情的に怒鳴ったり、人格を否定するような言葉と一緒に使われる場合は、明らかなパワハラです。
会社には職場環境を整える義務があり、パワハラを放置することは法的責任を問われる可能性もあります。
コミュニケーション不全
「帰れ!」という言葉に頼る上司は、適切なコミュニケーションスキルを持っていない可能性があります。
上司の役割は部下を育成し、適切な指導を行うことです。感情的な言葉で部下を追い返すのではなく、具体的な改善点を伝えることが重要です。
生産性の低下
「帰れ!」と言われる職場では、従業員の士気が低下し、結果として生産性も下がります。
従業員は「また怒られるかもしれない」という恐怖心から積極的な行動を避けるようになり、組織全体のパフォーマンスが低下する恐れがあります。
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まとめ:知っておきたい労働者の権利
「帰れ!」と言われた場合の対応についてまとめると、以下のポイントが重要です:
- 「帰れ!」という言葉は法的には業務命令と解釈される可能性が高い
- 業務命令に従って帰宅した場合、基本的には給料はカットされるべきではない
- 会社によっては早退・欠勤扱いになることもあるため、事前に確認が必要
- 不当な扱いを受けた場合は、記録を残し、適切な相談先(上司の上司、人事部、労働基準監督署など)に相談する
職場でのトラブルを避けるためには、お互いの尊重とコミュニケーションが大切です。上司も労働者も、感情的な言動ではなく、冷静な対話を心がけることが、健全な職場環境づくりにつながります。
- 「帰れ!」と言われて帰った場合、給料はカットされますか?
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法的解釈では、上司の「帰れ!」という言葉は業務命令と捉えられるため、その指示に従って帰宅した場合、給料はカットされるべきではありません。これは民法536条2項の「危険負担」の考え方が適用されるためです。ただし、実際には会社の給与規定や就業規則によって対応が異なる場合もあります。
- 「帰れ!」と言われたときはどう対応すべきですか?
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まずは冷静に「本当に帰宅するようにとの指示ですか?」と確認することが大切です。その上で指示に従う場合は、発言の日時や内容をメモするなど記録を残しておきましょう。また、状況に応じて上司の上司や人事部に相談することも検討してください。繰り返し同様の扱いを受ける場合は、労働基準監督署への相談も選択肢の一つです。
- 「帰れ!」という上司の言葉はパワハラになりますか?
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感情的に「帰れ!」と怒鳴ったり、人格を否定するような言葉と一緒に使われる場合、パワーハラスメントに該当する可能性があります。職場におけるパワハラ防止は事業主の義務となっていますので、このような行為が常態化している場合は、会社の相談窓口や外部機関(労働局など)に相談することも検討すべきでしょう。
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