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契約社員が正社員と同じ仕事なのに待遇差がある…不当?合理的?同一労働同一賃金の基準を解説

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「正社員と同じ仕事をしているのに、ボーナスは正社員の10分の1…」「残業代の計算方法が違う…」「有給休暇の日数が少ない…」。契約社員として働いているけれど、正社員との待遇差に疑問を感じたことはありませんか?

同じ職場で同じような仕事をしているのに、雇用形態が違うだけでこんなに待遇に差があっていいの?と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。

実は、2021年4月から「同一労働同一賃金」というルールが全ての企業に適用され、不合理な待遇差は禁止されています。

この記事では、契約社員と正社員の待遇差について、何が「不合理」で何が「合理的」なのか、分かりやすく解説します。

目次

契約社員と正社員の違いって何?

まずは「契約社員」と「正社員」の基本的な違いを確認しておきましょう。一般的には、以下のような違いがあります。

雇用期間の違い

契約社員は「有期雇用」、つまり雇用期間が定められている社員です。「1年契約」「6ヶ月契約」といった形で、期間が明示されています。

一方、正社員は「無期雇用」で、雇用期間の定めがなく、基本的には定年まで働けることが前提です。

ただし、有期雇用契約でも、同じ会社で更新を繰り返して5年を超えると「無期転換申込権」が発生し、希望すれば無期雇用に切り替えることができます。

でも、無期雇用になっても自動的に正社員になるわけではないんですよ。これが重要なポイントです。

勤務条件の違い

正社員は一般的に、会社の業務すべてを担当することができ、配置転換や転勤の可能性もあります。その代わり、雇用が安定しているというメリットがあります。

一方、契約社員は特定の業務や職場での勤務を条件として採用されていることが多く、配置転換や転勤の可能性は低めです。

その代わり、雇用の安定性は正社員よりも低く、契約更新の際に会社の判断で雇止めされる可能性があります。

同一労働同一賃金とは?不合理な待遇差は禁止

「同一労働同一賃金」という言葉、耳にしたことはありますか?

これは、正社員と非正規社員(パートタイマー、契約社員、派遣社員など)の間で、不合理な待遇差を設けることを禁止するルールです。

2021年4月からは、すべての企業に対して「パートタイム・有期雇用労働法」が適用され、雇用形態を理由とした不合理な待遇差が禁止されました。

つまり、「契約社員だから」というだけの理由で、基本給やボーナス、各種手当などを正社員より低く抑えることはできなくなったのです。

同一労働同一賃金の対象となる待遇

同一労働同一賃金のルールは、給与だけでなく、あらゆる待遇に適用されます。具体的には以下のようなものが対象です。

  • 基本給
  • 賞与(ボーナス)
  • 各種手当(通勤手当、残業手当、役職手当など)
  • 退職金
  • 福利厚生(社員食堂、社宅、保養所の利用など)
  • 教育訓練

例えば、「契約社員だから一律ボーナスなし」「契約社員だから退職金なし」「契約社員だから通勤手当は一部しか支給しない」といった対応は、同一労働同一賃金に違反する可能性が高いものです。

待遇差が認められるケース:何が「合理的」とされるのか?

とはいえ、すべての待遇を正社員と契約社員で同じにしなければならないわけではありません。

待遇差を設ける「合理的な理由」があれば、差をつけても違法にはなりません。では、どのような場合に待遇差が「合理的」と認められるのでしょうか?

1. 業務内容に差がある場合

正社員と契約社員の間で業務内容や責任の範囲に違いがある場合、それに応じた待遇差は合理的と判断されることがあります。例えば:

  • 正社員は高度な判断が必要な業務を担当しているが、契約社員は定型的な業務のみを担当している
  • 正社員は顧客開拓や新規事業の立ち上げなども担当するが、契約社員は既存顧客対応のみを担当している
  • 正社員は部下の管理・指導も担当するが、契約社員は個人の業務のみを担当している

こうした業務内容の違いに基づいて、基本給やボーナスに差をつけることは合理的と判断される可能性が高いでしょう。

2. 転勤や配置転換の有無による違い

正社員は会社の命令で転勤や配置転換があり得る一方、契約社員は特定の勤務地や職種に限定されていることが多いです。この違いは待遇差を設ける合理的な理由になり得ます。

転勤や配置転換の可能性がある正社員には、その負担やリスクへの対価として、より高い給与や手当を支給することが認められるケースが多いです。

これは「転勤・配置転換の有無」が賃金制度上の重要な要素となっている証です。

3. 人材活用の仕組みに差がある場合

会社が将来的にどのように社員を活用していくか、という点でも違いがあれば、それは待遇差の合理的な理由になり得ます。

  • 正社員は将来的に管理職や専門職としての活躍を期待され、そのための教育投資も行われている
  • 契約社員は特定の業務に特化した活用が想定されており、キャリアアップの仕組みが異なる

このような人材活用の仕組みの違いに基づいて、賞与や退職金に差をつけることは合理的と判断される可能性があります。

4. 能力・実績に差がある場合

同じような業務を担当していても、業務の成果や能力に差がある場合、それに応じた待遇差は合理的と判断されることが多いです。

例えば、営業職で正社員と契約社員が同じエリアを担当していても、実績に大きな差があれば、それに応じた賞与の差は合理的と判断される可能性が高いでしょう。

待遇差が不合理とされた具体例:裁判例から学ぶ

同一労働同一賃金に関しては、すでにいくつかの重要な裁判例があります。中でも有名なのが、2020年10月に最高裁で判決が出た「日本郵便事件」です。この裁判では、正社員と契約社員の間のさまざまな待遇差が争われました。

不合理とされた待遇差の例

日本郵便事件では、以下のような待遇差が不合理と判断されました。

  1. 年末年始勤務手当:年末年始に勤務する場合、正社員には特別手当が支給されていたが、契約社員には支給されていなかった。最高裁は「年末年始に勤務する負担は同じなのに、手当に差をつけるのは不合理」と判断しました。
  2. 病気休暇:正社員には有給の病気休暇が認められていたが、契約社員には認められていなかった。最高裁は「健康を害して働けなくなるリスクは両者で変わらない」として、この違いも不合理と判断しました。
  3. 夏期・冬期休暇:正社員には特別休暇として夏期・冬期休暇が付与されていたが、契約社員には付与されていなかった。最高裁は「労働者の休息の必要性は雇用形態によって異なるものではない」として、この差も不合理と判断しました。

合理的とされた待遇差の例

一方で、同じ裁判の中で、以下のような待遇差は合理的と判断されました。

  1. 基本給・賞与:正社員は無期雇用で幅広い職務や全国転勤の可能性があり、将来的に管理職への登用も期待されていることから、基本給や賞与に差があることは合理的とされました。
  2. 扶養手当:正社員には扶養手当が支給されていたが、契約社員には支給されていなかった点について、最高裁は「長期雇用を前提とした福利厚生として扶養手当を設けることには合理性がある」と判断しました。

契約社員のボーナス、どこまで差があっていいの?

特に気になるのが「ボーナス(賞与)」の待遇差ではないでしょうか。「正社員は基本給の3ヶ月分もらえるのに、契約社員は一律3万円」「正社員はボーナスあるのに、契約社員はゼロ」といった状況は、同一労働同一賃金の観点からどう判断されるのでしょうか。

ボーナスの性質による違い

ボーナスには様々な性質があり、その性質によって判断が分かれます。

  1. 業績連動型のボーナス:会社の業績や個人の成果に応じて支給されるボーナスの場合、同じような貢献をしているなら同じようなボーナスを支給すべきです。正社員と契約社員で貢献度が同じなのに、支給額に大きな差があると不合理と判断される可能性があります。
  2. 長期勤続奨励のためのボーナス:正社員の確保・定着を目的として支給されるボーナスの場合、契約社員との間に差があっても合理的と判断される可能性が高いです。ただし、この場合でも、契約社員に全く支給しないことは不合理と判断されるケースが増えています。

正社員のボーナス「3ヶ月分」vs 契約社員「3万円」は不合理?

冒頭の例で挙げたような「正社員は基本給の3ヶ月分、契約社員は一律3万円」というケースについては、一概には言えません。以下のような要素を考慮して判断されることになります。

  • 業務内容や責任の範囲に差があるか
  • 転勤や配置転換の可能性に差があるか
  • 人材活用の仕組みに差があるか
  • ボーナスの目的は何か(業績への貢献を評価するものか、長期勤続を奨励するものか)

例えば、業務内容が同じで、ボーナスが業績への貢献を評価するためのものであれば、「一律3万円」という設定は不合理と判断される可能性があります。

一方、正社員は将来的な管理職登用を前提とした人材育成がなされ、転勤の可能性もあるなど人材活用の仕組みに明確な違いがあれば、ある程度の差は合理的と判断される可能性があります。

不合理な待遇差を感じたらどうすればいい?

では、「自分の待遇は不合理なのでは?」と感じた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

1. 会社に説明を求める

まずは会社に説明を求めてみましょう。パートタイム・有期雇用労働法では、非正規社員は正社員との待遇差の内容や理由について、会社に説明を求める権利が認められています。そして、会社は具体的に説明する義務があります。

説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをすることは法律で禁止されていますので、安心して質問してください。

説明の際には、「正社員と契約社員の待遇差の理由を教えてください」と抽象的に聞くよりも、「ボーナスが正社員と大きく違う理由は何ですか?」「通勤手当の計算方法が違うのはなぜですか?」など、具体的に聞いた方が明確な回答を得やすいでしょう。

2. 労働局に相談する

会社の説明に納得できない場合は、お住まいの地域を管轄する労働局の「総合労働相談コーナー」に相談することができます。専門家が丁寧に対応してくれるので、気軽に利用してみましょう。

厚生労働省のウェブサイトには、待遇差に関する「チェックシート」も用意されていますので、活用するとよいでしょう。自分の状況を客観的に整理するのに役立ちます。

3. 労働組合に相談する

職場に労働組合がある場合は、労働組合に相談するのも一つの方法です。個人ではなく組織として会社と交渉してもらえる可能性もあります。

また、職場に労働組合がなくても、地域や業種ごとに組織されている「ユニオン」などに相談することも可能です。

年収を上げて将来の安心を手に入れるには、「転職」も一つの選択肢です。
最近では20〜30代女性の転職を専門サポートしてくれるエージェントも増えており、履歴書添削や面接対策まで無料で受けられます。

💼「自分に向いている仕事って?」「今より条件の良い職場は?」
そんな疑問も、キャリアのプロが一緒に考えてくれます。

まとめ:契約社員の権利を知って、適正な待遇を求めよう

「同一労働同一賃金」の導入により、単に「契約社員だから」という理由だけで待遇に差をつけることはできなくなりました。しかし、業務内容や責任の範囲、人材活用の仕組みなどに違いがあれば、それに応じた待遇差は認められます。

大切なのは、自分の権利を知り、不合理な待遇差があると感じたら、まずは会社に説明を求めることです。雇用形態が異なっても、同じような仕事をしているなら、それに見合った適正な待遇を受ける権利があります。

気になる待遇差があれば、この記事を参考に会社に説明を求めてみてください。適正な待遇が得られることで、モチベーションも上がり、より良い仕事ができるようになるはずです。

よくある質問

契約社員は有給休暇をもらえないのですが、これは違法ですか?

契約社員も、勤続6ヶ月以上で8割以上出勤していれば、労働基準法に基づいて有給休暇を取得する権利があります。有給休暇の日数は勤続年数によって決まり、最初は10日、その後勤続年数に応じて増えていきます。契約社員だからという理由だけで有給休暇を与えないのは違法です。

契約社員から正社員になる「無期転換」とは何ですか?

無期転換と正社員化は異なる概念です。有期雇用契約が更新されて通算5年を超えると、労働者は「無期転換申込権」を得ます。申込みをすれば、会社は契約期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)に変更する義務があります。しかし、無期雇用になっても自動的に正社員になるわけではなく、給与などの労働条件も基本的には契約社員時代と同じままです。正社員への登用を希望する場合は、別途会社の正社員登用制度等を活用する必要があります。

同一労働同一賃金のルールは派遣社員にも適用されますか?

はい、派遣社員にも同一労働同一賃金のルールは適用されます。派遣社員の場合は、「派遣先の正社員」との均等・均衡待遇か、「派遣元の労使協定」に基づく待遇のいずれかを確保することが派遣会社に義務付けられています。つまり、派遣先の正社員と同じような仕事をしているなら、待遇も均等・均衡にすべきというルールです。

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