タワーマンションを購入する際、気になるのが毎年支払う固定資産税の金額ではないでしょうか。
「タワマンは税金が安い」と聞いたことがある方も多いと思いますが、2017年の税制改正で大きく仕組みが変わりました。
この記事では、2025年4月時点のタワーマンションの固定資産税の計算方法や階層による違い、さらに近年の税制改正の影響について、わかりやすく解説します。
タワーマンションの固定資産税はどう計算される?

固定資産税は土地と建物それぞれにかかる税金で、その合計額を毎年支払う必要があります。まずは基本的な計算方法を見ていきましょう。
固定資産税の基本計算式
固定資産税の基本的な計算式は以下の通りです。
この計算式に加えて、都市計画税(課税標準額 × 0.3%)も併せて納付することが一般的です。ただし、税率は自治体によって異なる場合があります。
タワーマンションの固定資産税が安いと言われる理由
従来、タワーマンションの固定資産税が安いと言われてきた理由は主に以下の点にあります。
- 土地の評価額が分散される タワーマンションでは多数の住戸で土地を共有するため、1住戸あたりの土地持分が小さくなります。この結果、住宅用地の税額軽減措置(小規模住宅用地は評価額の1/6に軽減)の恩恵を最大限に受けられます。
- 新築時の減税措置 新築マンションは床面積120㎡相当分までを限度として、5年間は固定資産税が2分の1に減額されます(認定長期優良住宅の場合は7年間)。
これらの理由により、同じ価格帯の一戸建てと比較して、タワーマンションの固定資産税は安くなる傾向がありました。
2017年の税制改正でタワーマンションの税額はどう変わった?

タワーマンションの固定資産税の計算方法は、2017年度の税制改正で大きく変わりました。この改正により、高層階ほど固定資産税が高くなる仕組みが導入されました。
高層階と低層階の価格差を反映
改正前は、同じ専有面積であれば階数に関係なく固定資産税は同額でした。しかし、実際の市場では高層階ほど価格が高くなるという現実がありました。
税制改正により、「階層別専有床面積補正率」が導入され、階数によって税額に差がつくようになりました。具体的には以下のような計算式になります。
例えば、30階建てのタワーマンションの場合:
- 1階:補正率1.00
- 10階:補正率1.00 + (0.256 × 9) ≒ 1.23
- 30階:補正率1.00 + (0.256 × 29) ≒ 1.74
この補正率により、高層階に住む人の固定資産税負担が増加し、低層階に住む人の負担は軽減されるようになりました。
税制改正の適用対象となるタワーマンション
この税制改正が適用されるのは、以下の条件を満たす「タワーマンション」です。
- 高さ60メートル以上(概ね20階建て以上)
- 複数の階に分かれている
- 1棟の家屋で区分所有されている建物
タワーマンションの固定資産税額の具体例

それでは、具体的な例でタワーマンションの固定資産税を試算してみましょう。
ケーススタディ:30階建てタワーマンションの場合
例えば、以下の条件のタワーマンションを考えます。
- 専有面積70㎡
- 土地の固定資産税評価額3,000万円
- 家屋の固定資産税評価額1,500万円
- 30階建てタワーマンション
低層階(5階)の場合
階層別専有床面積補正率:1.00 + (0.256 × 4) ≒ 1.10
固定資産税
- 土地:3,000万円 × 1/6 × 1.4% = 70,000円
- 家屋:1,500万円 × 1.10 × 1.4% = 231,000円
- 合計:301,000円
高層階(25階)の場合
階層別専有床面積補正率:1.00 + (0.256 × 24) ≒ 1.61
固定資産税
- 土地:3,000万円 × 1/6 × 1.4% = 70,000円
- 家屋:1,500万円 × 1.61 × 1.4% = 338,100円
- 合計:408,100円
この例からわかるように、同じマンション内でも階層によって税額に大きな差が生じることになります。高層階では低層階に比べて10万円以上高くなることもあります。
新築タワーマンションの場合の減税措置

新築タワーマンションの場合は、5年間(認定長期優良住宅は7年間)、家屋の固定資産税が2分の1に減額される特例があります。先ほどの例で考えると、次のようになります。
低層階(5階)の場合(新築時)
- 家屋:1,500万円 × 1.10 × 1/2 × 1.4% = 115,500円
- 土地:70,000円
- 合計:185,500円
高層階(25階)の場合(新築時)
- 家屋:1,500万円 × 1.61 × 1/2 × 1.4% = 169,050円
- 土地:70,000円
- 合計:239,050円
このように、新築時はさらに税負担が少なくなりますが、6年目からは通常の税額に戻ることに注意が必要です。
2024年の税制改正でタワマン節税はどうなった?
2024年の税制改正では、いわゆる「タワマン節税」に影響を与える改正が行われました。これは主に相続税に関する改正ですが、タワーマンション所有者にとっては重要な変更点です。
「タワマン節税」とその変化
従来、タワーマンションの相続税評価額は市場価値と比較して低く評価される傾向がありました。これを利用した節税対策が「タワマン節税」と呼ばれていました。
2024年1月以降の相続では、評価額と時価との乖離率が1.67倍を超えるマンションについては、評価方法が見直されます。具体的には、乖離率が1.67倍になるよう調整されるため、従来よりも相続税評価額が上がる可能性があります。
ただし、この改正によってタワーマンションの節税効果が完全になくなったわけではありません。低層階や築年数が古い物件では、従来通りの節税効果が期待できる場合もあります。
まとめ:タワーマンションの固定資産税を理解する
タワーマンションの固定資産税の特徴をまとめると以下のようになります。
- 土地の評価額が分散されるため、一戸建てよりも土地にかかる固定資産税は安くなる傾向がある
- 2017年の税制改正により、高層階ほど固定資産税が高くなる仕組みが導入された
- 新築マンションは5年間(認定長期優良住宅は7年間)、家屋の固定資産税が半額になる
- 2024年の税制改正で、相続税においてタワマン節税の効果が縮小された
タワーマンションを購入する際には、将来的な税負担も含めて検討することが重要です。特に高層階を検討している場合は、税制改正による影響を考慮に入れましょう。
また、固定資産税は住宅ローンの返済額や管理費・修繕積立金とともに、毎年の必須支出として計画に組み込んでおく必要があります。
- タワーマンションの固定資産税はなぜ安いと言われるのですか?
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タワーマンションでは多数の住戸で土地を共有するため、1住戸あたりの土地持分が小さくなります。その結果、小規模住宅用地の税額軽減措置(評価額の1/6に軽減)の恩恵を最大限に受けられるため、同価格帯の一戸建てと比較して固定資産税が安くなる傾向があります。
- 2017年の税制改正でタワーマンションの固定資産税はどう変わりましたか?
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2017年の税制改正により、「階層別専有床面積補正率」が導入され、高層階ほど固定資産税が高くなる仕組みとなりました。1階を基準(補正率1.00)として、階が上がるごとに約0.256%ずつ補正率が上昇します。これにより高層階の住民の税負担が増加し、低層階の住民の負担は軽減される仕組みとなりました。
- 新築タワーマンションの固定資産税はどのくらい減税されますか?
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新築マンションは床面積120㎡相当分までを限度として、5年間は固定資産税が2分の1に減額されます(認定長期優良住宅の場合は7年間)。これは高さに関係なく適用される制度ですが、6年目(認定長期優良住宅は8年目)からは通常の税額に戻るため、将来的な支出計画に組み込む必要があります。
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